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Looking Glass入門 — 裸眼立体視ディスプレイの基礎知識
この記事では、Looking Glass(LKG)に関連する他の記事を読む前に知っておくべき基礎知識をまとめています。キルト画像やレンチキュラー変換など、LKG開発で頻繁に登場する概念を体系的に解説します。
Looking Glassとは
Looking Glassは、米国Looking Glass Factory社が開発・販売する 裸眼立体視ディスプレイ です。一般的な3Dディスプレイと異なり、専用メガネやヘッドセットを装着する必要がありません。
ディスプレイの前に立つだけで、複数の角度から立体的な映像を見ることができます。少し横に動くと、実物を眺めるように見え方が変化する「運動視差(モーションパララックス)」を体験できるのが大きな特徴です。
この立体表示を実現しているのが、ディスプレイ表面に配置された レンチキュラーレンズ です。レンチキュラーレンズは微細なかまぼこ状のレンズが並んだ構造をしており、見る角度によって異なるピクセルの光を目に届けます。これにより、左目と右目にそれぞれ異なる視点の画像が届き、脳が立体として認識します。
キルト画像(Quilt Image)の仕組み
キルト画像とは
キルト画像は、Looking Glassで立体表示を行うための ソース画像フォーマット です。1枚の大きな画像の中に、複数の視点から撮影・レンダリングした画像をタイル状(グリッド状)に並べて格納します。
例えば、5列 x 9行 = 45視点のキルト画像であれば、左端から右端までの45段階の視点がタイル状に配置されています。Looking Glassはこれらの視点画像を組み合わせて、滑らかな立体映像を生成します。
キルト画像の構造
┌─────┬─────┬─────┬─────┬─────┐
│ V37 │ V38 │ V39 │ V40 │ V41 │ ← 上段(右寄りの視点)
├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│ ... │ ... │ ... │ ... │ ... │
├─────┼─────┼─────┼─────┼─────┤
│ V01 │ V02 │ V03 │ V04 │ V05 │ ← 下段(左寄りの視点)
└─────┴─────┴─────┴─────┴─────┘
5列 x 9行 = 45視点の例視点は左下(V01)から右上に向かって番号が増えていきます。視点数が多いほど、視差の遷移が滑らかになります。
命名規則
キルト画像には以下の命名規則があります。この規則に従うことで、Looking Glass Bridgeやその他のツールがキルト画像のパラメータを自動認識できます。
{name}_qs{cols}x{rows}_a{aspect}.{ext}| 要素 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
{name} | 任意のファイル名 | mymodel |
{cols} | 列数(横方向のタイル数) | 5 |
{rows} | 行数(縦方向のタイル数) | 9 |
{aspect} | 個々のタイルのアスペクト比 | 0.75 |
{ext} | ファイル拡張子 | png, jpg |
具体例: mymodel_qs5x9_a0.75.png
この例は、5列 x 9行(45視点)、各タイルのアスペクト比が0.75のキルト画像であることを示しています。
レンチキュラー変換
変換の概要
キルト画像をそのままディスプレイに表示しても、立体には見えません。Looking Glassのレンズ構造に合わせて画素を再配置する処理が必要です。この処理を レンチキュラー変換 と呼びます。
レンチキュラー変換では、キルト画像の各視点画像からピクセルを抽出し、ディスプレイ上のレンズ配列に対応する位置へ再マッピングします。変換後の画像は人間が直接見ても意味のある絵には見えませんが、レンチキュラーレンズ越しに見ると正しい立体映像として知覚されます。
変換を行う方法
レンチキュラー変換は、以下のソフトウェアが自動的に処理してくれます。
- Looking Glass Bridge --- デバイスに表示する際にリアルタイムで変換
- LKG SDK(Unity Plugin) --- Unityアプリ内でリアルタイムに変換・表示
- Looking Glass Studio --- キルト画像や3Dモデルのプレビュー時に変換
開発者が変換アルゴリズムを直接実装する必要は通常ありません。
Looking Glass Bridge
役割
Looking Glass Bridgeは、PCとLooking Glassデバイスを接続するための 常駐型ソフトウェア です。PCのバックグラウンドで動作し、以下の機能を提供します。
- デバイスの認識と接続管理
- キルト画像のレンチキュラー変換とデバイスへの転送
- REST API経由での外部アプリケーションとの連携
- デバイスのキャリブレーション情報の管理
開発時の重要性
Looking Glass向けのアプリケーションを開発・テストする際、Bridgeが起動していることが前提になります。Bridgeが停止しているとデバイスに映像が表示されないため、開発作業の前にBridgeの起動状態を確認する習慣をつけましょう。
BridgeはLooking Glass Factory公式サイトからダウンロードできます。
LKG SDK(Unity向け開発キット)
概要
LKG SDKは、UnityでLooking Glass向けアプリケーションを開発するための公式プラグインです。Unityシーン内のカメラから複数視点のレンダリングを行い、リアルタイムにキルト画像を生成してLooking Glassに表示します。
SDK3からSDK4への移行
現在、SDKにはバージョン3系とバージョン4系が存在します。
| 項目 | SDK3 | SDK4 |
|---|---|---|
| 対応Unity | Unity 2020 ~ 2022 | Unity 6 (6000.1以降推奨) |
| レンダーパイプライン | Built-in / URP | URP対応が強化 |
| 主な変更点 | --- | UI表示の改善、パフォーマンス最適化 |
| 状態 | メンテナンスモード | 現在アクティブに開発中 |
SDK4はまだアルファ版の段階であり、一部の機能に制限や不具合が残る場合があります。新規プロジェクトではSDK4の採用を推奨しますが、既存プロジェクトの移行は安定版のリリースを待って検討するのがよいでしょう。
SDK導入の具体的な手順については、本Wiki内の LKGSDK導入手順 を参照してください。
主要デバイス一覧
Looking Glass Factory社は、用途やサイズに応じた複数のデバイスをラインナップしています。
Looking Glass Go
- 画面サイズ: 約6インチ
- 特徴: ポータブルサイズのLooking Glass。バッテリー内蔵でスタンドアロン動作が可能です
- 用途: 個人利用、デスク上での3D写真表示、モバイルデモ
Looking Glass 16インチ
- 画面サイズ: 16インチ
- 特徴: デスクトップ設置に適した中型モデル。開発用途に多く使われます
- 用途: 開発・検証、小規模プレゼンテーション、オフィス展示
Looking Glass 27インチ
- 画面サイズ: 27インチ
- 特徴: 複数人での閲覧に適したサイズ。展示会やショールームでの利用に向いています
- 用途: 展示会デモ、ショールーム、プレゼンテーション
Looking Glass 65インチ
- 画面サイズ: 65インチ
- 特徴: 大型モデル。大人数での閲覧や大規模展示に対応します
- 用途: 大規模展示、イベント、商業施設
デバイス選定のポイント
デバイスごとにキルト画像の推奨解像度や視点数が異なります。コンテンツ制作時には、ターゲットデバイスの仕様を事前に確認してください。
当社での活用
当社では、Looking Glassを以下の領域で活用しています。
コンテンツ制作
3DCGモデル、3D Gaussian Splatting(3DGS)、AI生成動画などを素材として、キルト画像やキルト動画を制作しています。BlenderやUnreal Engineなど複数のツールを用いたワークフローを構築しています。
Unityアプリ開発
LKG SDKを使用して、インタラクティブな3Dビューアや断面表示アプリなどを開発しています。SDK3からSDK4への移行にも取り組んでいます。
展示会デモ
16インチや27インチのデバイスを持ち込み、クライアントやイベント来場者向けのデモンストレーションを行っています。
関連記事
具体的な制作手順やアプリ開発の詳細は、本カテゴリ内の各記事を参照してください。
用語集
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| Looking Glass(LKG) | Looking Glass Factory社製の裸眼立体視ディスプレイ、およびその製品ブランドの総称 |
| 裸眼立体視 | 専用メガネなしで立体映像を知覚できる技術の総称 |
| キルト画像(Quilt Image) | 複数視点の画像をタイル状に配置した、LKG向けの画像フォーマット |
| レンチキュラーレンズ | 微細なかまぼこ状レンズの配列。角度によって異なる画像を目に届ける |
| レンチキュラー変換 | キルト画像をLKGのレンズ構造に合わせて画素を再配置する処理 |
| モーションパララックス(運動視差) | 視点を移動すると見え方が変化する現象。立体感の重要な要素 |
| Looking Glass Bridge | PCとLKGデバイスを接続し、映像転送やデバイス管理を行う常駐ソフトウェア |
| LKG SDK | Unity向けのLooking Glass公式開発プラグイン |
| 3DGS(3D Gaussian Splatting) | 点群ベースの3D表現技術。LKGコンテンツの素材として活用される |
| 視点数 | キルト画像に含まれる視点の総数。列数 x 行数で決まる |
| アスペクト比 | キルト画像内の個々のタイル(視点画像)の縦横比 |
| キャリブレーション | LKGデバイスのレンズ配置に応じた補正データ。デバイスごとに固有 |
この記事の位置づけ
本記事はLKGカテゴリの入門ガイドとして作成されています。各トピックの詳細な手順や実践的なノウハウは、カテゴリ内の個別記事を参照してください。